FT-817ファイナル交換方法
作業前に写真を撮っておくことをお勧めします。

FT-817のファイナルは面実装部品であり交換が難しいのですが、独自の方法により特別な工具なしに 交換することができましたので紹介します。FT -817をオークションで入手しました。HFのポータブルアンテナ込みで5万円ほど。144MHz帯のSWR表示が実際より高い気がしていたのですが、そ のまま使用することに。しばらくして出力があまり出ていないことに気がつき、計ってみると0.5W程度しか出ていません。メーカー診断はファイナル方飛び にて13k円の出費でした。

webを見ますとそのような話がちらほら。この機種特有の現象のようです。ある方のHPを見ると、ファイナルのドレインソース間耐圧が30Vしかないこ と、ファイナルのドレインには13.8Vのラインが常時接続されていることが書かれていました。電源が0Vのときに電源コードに静電気などが入ったら、ど うなるでしょうか。ICなどは入力端子に耐圧保護がされていますから、静電気が混入しても問題ないですが、素子単体では何の保護もなく素子破壊がおきてい るのではないかとの疑いがありました。そこで30Vのツェナーダイオードをドレインとソース間に入れておきました。この処置でしばらくは何の故障もなく使 えました。

1年後、ベランダにステルスHF釣竿アンテナを設置した関係からアンテナのつなぎ替えをしていたところ、HFの出力があまり出ていないことに気がつきま した。計ってみると0.5W程度。。またファイナルが飛んだようです。さすがにメーカーに修理を出すことはためらい、自分でリワークすることを考えまし た。分解してみると、ファイナルの下には素子に対して巨大な放熱器がついていました。これに熱が吸い取られないようにするには相当の配慮が必要です。中に はポンチで壊してしまうかたもおられるようですが、なんとかハンダの融点まで持っていき、外すことを考えました。

準備:

工具
    半田ごて二本
    ハンダ
    シリコングリス
    フラックス
    電源13.8V3A以上
    配線材若干
    速乾ボンドG17
    ピンセット
    ハンダ吸い取り線

部品
    2SK2975 *2(サトー電気)(後期型は2SKではないものが搭載されているようです。そちらは同じものを入手します。)
    クラッド抵抗 6.2Ω25W *1(サトー電気)
    かまぼこ板 *1
    2mmねじセット 若干
  
作業:

かまぼこ板にクラッド抵抗を逆さに載せ速乾ボンドG17で固定します。817のファイナルユニットを取り外して、下部放熱板にシリコングリスを塗布し、クラッド抵抗に取り付けます。ねじ穴にねじで固定します。

13.8Vを供給する前に、熱に弱い電解コンデンサ47uFを半田ごて二本使って取り外しておきます。

その後、電源を接続するとだんだんと温度が上がってきます。2SK2975をピンセットで摘んでいると、融点に達した時に簡単に外れます。2SK2975 を二個とも外したらすぐに電源を切ります。2SK2975の向きはあらかじめ確認しておきます。同じ向きに設置するために。

素子を取り付ける下準備としてゲートとドレインについた余分なハンダをハンダ吸い取り線で吸い取ります。ソース取り付け部は穴が貫通しており、背面の放熱 器が露出しています。放熱器についたハンダに、新たなハンダを足して基板表面より若干盛り上がる程度にします。

素子下にはフラックスを薄く塗布します。

2SK2975を基板に設置します。放熱器に盛ったハンダのせいで基板の表面から若干浮き上がっている状態になります。ピンセットで向きを調整しておきま す。再び13.8V電源に接続してしばらくしますと、半田の融点に達し、素子が沈んでゆくのが見えます。素子が沈むときに向きが少し変わることがあるので ピンセットで慎重に調整します。大きくずれてしまったら取り外して再度挑戦します。基板表面まで素子が沈んだら、放熱器の穴のサイドにあるソース部のパ ターンにハンダの濡れが回ってゆく様子が見えます。それを確認したらゲートとドレインの各端子をハンダ付けします。素子に半田ごてを当てると素子の位置が すぐに変わるので、ハンダだけパターンに盛るようにすると、すぐに全体に濡れが回ります。若干ハンダを足す程度でさっと濡れる感じになれば良いです。 2SK2975を二個ともハンダ付けしたら、すぐに13.8Vの電源を切ります。クラッド抵抗とネジ留めしてますから両方とも冷ますことになりますが、ネ ジ止めしなければこの時点でクラッド抵抗から取り外して冷ますこともできます。要は素子のジャンクションが溶ける前にこの作業を終えなければなりません。 しかしながら冷ますにもある程度の時間をかける必要があります。急激に冷ますと熱収縮率の差から素子が割れることもあります。このあたりのさじ加減が難し いです。私はクラッド抵抗に乗せたままなんとなく冷ましましたがうまく行きました。

元通りに配線を取り付けます。47uF側の錫メッキ線が13.8Vのライン、反対側がTX_5Vの電源ラインになります。今回、TX_5Vの電源ラインに 連動させる形で13.8Vの供給を入り切りさせて、次のファイナル飛びを防止しようと考えました。正確にはドライブ段もドレインが13.8Vに直結されて いるのですが、こちらも含んで改造するとなると相当手が入ることがわかり、こちらは断念しました。(そのせいか、故障の中にはドライブ段が飛んでいる場合 もあるようです。)
(2013/6追記)ドライブ段がフロートしたままであるため、30VのツェナーダイオードをFETの入力側にも入れることにしました。したがって下記回路図の13.8と記載されているところにグランドとの間にツェナーダイオードを入れます。

回路図は次のとおりです。

部品表:
    2SJ334 *1(サトー電気)
    2SC1815等NPNトランジスタ *1
    100kΩ *1
    10kΩ *1
    5.1kΩ *1
FT-
TX_5Vの供給が始まると2SJ334が導通し、ファイナルに電源が行きます。電源がファイナルに供給されていないときには5kΩの抵抗でドレイン電圧は0Vになります。写真のように基板上に配置します。高さが出るとケースに接触しますので注意します。

無事5Wが出ました。

調整方法ですが、ファイナル部13.8Vラインの錫メッキ線のハンダ付けを外して、間に電流計モードにしたテスタを入れて電流を測ります。半固定抵抗を二 個とも反時計回りに回し切り、トランシーバーを1.800MHz CWモードにしてANT端子にダミーロードを接続しPTTを握ります。47uF側の半固定抵抗を回して電流計が45mAになるように調整します。その後も うひとつの半固定抵抗を回して76mAになるように調整します。この調整がかなりシビアです。ファイナル部のRevが上がっている理由はこの辺りにあるの かもしれません。この調整法および数値はFT-817初代のものと思われますから、ND等Rev.の上がっている基板の場合はそのまま触らないほうが良い かもしれません。

最後にこれら記事に起因するすべての責任は負いませんのでご自身の責任において作業されてください。

ではご健闘を祈ります。

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